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テニス選手における足首捻挫後の取り組み方
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 テニス選手・愛好家で一番多い怪我が、足首の捻挫(足関節捻挫)です。足関節捻挫の中でも、捻った方向や痛める場所で捻挫の種類は異なりますが、ここでは足首の捻挫全てを指す事とします。本コラムでは、テニス選手が捻挫後、「関節が緩くなった」「捻挫が癖になった」という状態に対する取り組み方を紹介致します。
 そもそも捻挫というのは、靭帯の怪我です。靭帯というのは、骨と骨を結んでいる“ひも”みたいなイメージをしてください。ちなみに、その“ひも”が切れれば、「靱帯断裂」になり、分類は同じ捻挫です。靭帯は伸びる性質(弾性)があり、それが許容範囲を超え、過度に伸びると捻挫。靱帯断裂の場合は、より強い力が加わり、靭帯がその力に耐えきれず、切れてしまうという事です。
 捻挫をしてしまった場合、まずは痛みや腫れなどの症状を治療することになります。それらの症状を考慮しながら、リハビリを行い、競技復帰するという事が一般的な取り組み方になります。ちなみにリハビリは、ドクターや専門家の許可があれば、なるべく早期に取り組むべきです。とりわけ、足関節捻挫であれば、足首以外の様々なリハビリやトレーニングを行う事が出来ます。詳しくは、別コラムの「受傷後のリハビリ開始のタイミング」をご参照ください。
 治療やリハビリを終え、競技復帰した後、「足首が緩い感じがする」「捻挫をよくする(捻挫癖)ようになった」という事があります。先述したように、靭帯には「弾性」という性質があります。その為、一度過度に伸びてしまった靭帯(捻挫後)、伸びっぱなしの状態になり、捻挫受傷以前より、「関節が緩い」「捻挫癖」という状態になってしまいます。そのような状態になった場合、「足首周りを強化しよう」という流れになります。先にお伝えしておくと、「足首周りの強化だけでは、関節の緩さや捻挫癖は改善できない」と言うのが、私の意見です。
 足首周りの筋肉を強化しよう、という考え方を説明します。そもそも、骨に付いている筋肉が伸び縮みする事で、身体(関節部)が動きます。骨や関節自体が動くわけではありません(脱臼などの外力からの動きは除く)。靭帯が緩み、関節が過度に動くのであれば、その周りをコーティングしている筋肉を鍛え、結果関節周りを強くし、関節の緩さや捻挫癖を改善しよう、という考え方です。
 確かに筋力強化は重要ですし、実際私が担当する選手達にも足首周りの筋力強化を指示します。ただ、それだけでは不十分です。テニスで捻挫をしてしまう一番多いケースが、前後左右に振られた時です。ボールを追いかけ走り、地面に足を接着する時に「グキ!!」といった具合。ボールを追いかけバランスを崩したとき、走った時の加速力や自身の体重などを、足首周りだけの筋力でサポートをする力はありません。その為、捻挫予防や関節の緩さ改善の為に、足首だけでなく、下半身全体や体幹までを鍛え上げ、身体全体で足首を守る、という発想が必要であると考えます。
 加えて、フットワーク技術が重要。前後左右に振られ、足首を捻る時、大抵の場合ボディバランスが崩れます。その理由が、先の筋力不足に加え、フットワーク技術の不足です。極論言えば、筋力が十分になくとも、フットワーク技術があり、ボディバランスを崩さなければ、足首の捻挫は起きずらいという事です。実際、多くの成長期前のジュニア達は、十分な筋力はありません。しかし、コート上を走り回りながらも、捻挫とは無縁な選手達はたくさんいます。大人に比べ、関節が柔らかいという事もありますが、捻挫とは無縁のジュニア達を観察すると、フットワーク技術が高いです。体重移動や足の接着動作など、フットワークを観察し改善する事で、足関節後の再発はかなりの確率で低くすることが出来ます。
 最後にサポーターの導入です。筋力向上やフットワーク改善まで時間がかかります。その間を含め、サポーターを導入する事で、仮に過度な力が足首にかかっても、足首をサポートしてくれます。「サポーターをすると、筋力が下がるのでは?」と、聞かれることがありますが、個人的には「大丈夫!」と答えています。足首のサポーターは、関節サポートの為に使われます。筋肉の代わりをするわけではありません。その為、過去に捻挫をした選手は、その後テニスをする時、常にサポーターを使う場合があります。もちろん、足首を含めた下半身・体幹の強化、フットワーク技術の改善を同時に行いながらです。また捻挫癖のある選手は「いつまた捻挫してしまうか怖い」というメンタル状況になる場合があります。そうなると、遠くのボールを追いかけたり、切り返し動作をする時、思い切りできなくなってしまう場合があります。足首サポーターの使用にはそんな利点もあります。
 足関節捻挫後の「足首が緩い」「捻挫癖になってしまった」という時の改善策をまとめると、
① 足首だけでなく、下半身・体幹を含めた筋力強化
② フットワーク技術の向上
③ サポーターの使用

 が挙げられます。バランストレーニングや足部のトレーニングなど、まだ他にもありますが、まずはこの3つをメインに考えてもらえれば大丈夫だと思います。

筆者情報

プロテニストレーナー&テニスコーチ

菅尾 祐助

小学生からテニスを始める。高校卒業後渡米し、アスレティックトレーニングを学ぶ。帰国後、菅尾アスレティックトレーニングセンター(S.A.T.C)を設立し、アスリートやスポーツ愛好家の怪我やリハビリ、トレーニング、コンディショニング等をサポート。また、はちおうじ庭球塾(八王子テニススクール)にて、ジュニア育成に従事。

怪我やトレーニング、テニスサポートのご相談はS.A.T.Cまで。
ジュニア育成は、はちおうじ庭球塾まで。
お問い合わせはこちらから。

(株)S.AT.C 代表取締役
テニスメディカルトレーニングラボ(TMTL) 代表
はちおうじ庭球塾 塾長
特定非営利活動法人スポーツライフネットワーク 代表理事
鈴木慶やすらぎクリニック アスレティックトレーナー
境界なきアスリートサポート 共同代表

米国公認アスレティックトレーナー (NATA-ATC)
米国公認ストレングスコンディショニングスペシャリスト (NSCA-CSCS)
インターナショナルテニスパフォーマンス協会公認
テニスパフォーマンススペシャリスト (ITPA-CTPS)
アメリカプロテニス協会公認 プロフェッショナルテニスコーチ
アスレティックトレーニング修士 (MS)

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